『ワイド!スクランブル』コメンテーター就任の柳澤秀夫に期待! 『あさイチ』で繰り返し語った震災、沖縄、言論の自由

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 秋の改編で報道・情報番組がリニューアルし、2週間が経った。本サイトでは、『報道ステーション』(テレビ朝日)が7月からチーフプロデューサーが交代したことを皮切りに、ジャーナリスティックな視点で的確なコメントを発してきたサブキャスターの小川彩佳アナウンサーを降板させるなど政権批判潰しを図っていると伝えてきたが、今回のリニューアルにより、金曜には安倍応援団の弁護士・野村修也氏が登場。しかも金曜は情報番組やスポーツの印象が強い小木逸平アナと竹内由恵アナがキャスターを務め、その内容はワイドショーさながらでもはや別番組のよう。

 それは、有働由美子氏をキャスターに据えた『news zero』(日本テレビ)も同様だ。どうやら有働氏の“ゆるい”空気感を重視しているようだが、肝心の取り上げるニュースについても、初日の1日には前日におこなわれた沖縄県知事選の結果をスルー。加計学園の加計孝太郎理事長の記者会見も報じることなく、翁長雄志・前沖縄県知事の県民葬の模様を伝えた際も、菅義偉官房長官に対して参列者から怒声が起こったことは無視して報じなかった。

 どんどんとテレビから消えていく政権批判。だが、そんななかでほとんど唯一と言っていい、希望がもてるキャスティングの変化もあった。テレビ朝日の情報番組『ワイド!スクランブル』で、あの柳澤秀夫氏が水・金曜コメンテーターになったからだ。

 柳澤氏といえば、有働氏やV6・井ノ原快彦とともに『あさイチ』の顔として出演、“やなぎー”と呼ばれ人気を博したNHK解説委員。柳澤氏はこの9月いっぱいでNHKを退局しフリーのジャーナリストへと転身、民放への初出演がこの『ワイド!スクランブル』となった。

 そして、同番組でも“やなぎー”はさっそく存在感を発揮している。

 たとえば、初出演となった3日の放送では、熊本市議会でのど飴を舐めながら質疑をおこなったことで議場から退席させられた緒方夕佳市議の問題が取り上げられたのだが、同じく同番組コメンテーターの杉村太蔵氏が「何事も許可がいるのは事実」「こうなるのは仕方がない」などと杓子定規なルール論で熊本市議会の対応を擁護すると、柳澤氏は「この騒動の前に、何か伏線があったのかな。ただ、それが品位(を汚す)っていうことにあたるかどうかは別問題な気がしますよね」と切り出し、緒方市議が昨年子連れで議会に出席しようとして阻まれていたことから「先月、国連総会でニュージーランドの女性首相が赤ちゃん連れて議場に入るということがありましたけど、国連の場でそういうことがあるということは、日本のこの出来事は世界の人から見たらどう見えるのかなと」と日本の議会の後進性をやんわり指摘。「金科玉条のごとく、ひとつのルールに縛るというのは、時代に向き合っていない、社会に向き合っていないということになるのではと個人的には思いますけどね。かたちではなく、何を話し合って決めるのかというのが重要ですよね」と熊本市議会の旧態然とした対応に疑問を呈した。

 さらに、この日は、安倍首相が内閣改造で命名した「全員内閣野球」にも、「野球ってもともと全員でやるじゃないですか。当たり前のことのような気がするんですけど。いままでそうじゃなかったのか?って気がするんですよね。聞いててそう思う方もいるんじゃないかな」とツッコんだ。

 また、5日の放送では、ノーベル平和賞に北朝鮮の金正恩国務委員長が有力候補にあがっているという話題の際にも、批判的な論調のスタジオトークのなかで「でもね、(金正恩に賞を)やっちゃって、手足を縛っちゃって、本当に平和にするっていうなら、それでいい気がしますけどね」とコメント。ワイドショーでは相変わらず北朝鮮の脅威論がいまだに幅を利かせているが、柳澤氏はそれよりも、平和・外交的解決に重きを置いたのだ。

 保守的なコメントが溢れるなかで柔軟な視点をもち、政権批判もさらっと口にする柳澤氏。いまはまだ番組コメンテーターとしての仕事は始まったばかりだが、それでも期待してしまうのは、やはり『あさイチ』で発してきた思慮深いコメント、とくに「伝えることの意味」をつねに問いかける言葉が印象深いからだ。

●『あさイチ』震災特集で柳澤氏が吐露した福島・被災地への思い

 たとえば、震災から6年を迎えようという2017年3月8日、『あさイチ』では震災特集として「データでみる東日本大震災から6年」が放送された。そのなかで、当時流行語となった“震災婚“絆婚”という言葉を紹介、婚姻数が震災翌年には7000件増えたこと、離婚件数が震災前年と比べて1万6000と大きく減少したことなどが“全国データ”で示されたことに対し、有働アナ含めスタジオが無難なコメントに終始するなか、柳沢氏は番組の報道姿勢にこう苦言を呈した。

「一言では言えないね。だって離婚が減っているというのも福島の現実と違う。帰る、帰らないで、いろいろ問題になっている。ひびが入って離婚することが福島の場合には問題になっているくらいなので。全国で大きい目でみるのと、(福島も一緒に)データでくくるのは、正直、違和感がある。くくれない」
「5、6年で現実が見えるものもいいけど、僕は福島出身ということもあって、それはなかなか見えてきませんね。福島の当事者にしてみれば、農作物を作るにしても愚直に、やれることを丁寧に続けるしかないんです」
「日常の戻り方が被災地と被災地でない人の差が大きくなっていますよね。僕たちは震災と関係のない日常が戻っていますけど、被災地はそうではありません」

 柳沢氏は被災地、特に福島の現状や離婚の実態を“データ”、それも“全国データ”でひとくくりにして欲しくないと憤り、被災地の現実から目を背け、被災地の状況を正確に伝えないメディアにも苦言を呈した。

●柳澤秀夫氏「右から左に垂れ流すのがメディアの仕事ではない」

 柳沢氏が寄り添うのは出身地である福島だけではない。沖縄についても繰り返し語ってきた。たとえば、同番組が沖縄の本土復帰から45年目の節目を迎えた昨年5月15日に放送した特集では、柳澤氏自ら沖縄をレポート。いつ事故を起こすかわからない米軍機が頭上を飛び交う沖縄の日常を伝え、スタジオではこう口を開いた。

「僕自身も正直、こうやって沖縄の基地のことを取り上げるときに、原稿上は『沖縄の基地問題』って書くじゃない。これにものすごく違和感を感じているんですよ、最近。『沖縄の問題』『沖縄の基地問題』、これ違うんじゃないかと。『日本の問題じゃないか』って。沖縄と本土というよりも日本全体の問題だってことを意識しないと、これは現実をきっちり捉えることできないんじゃないかって、つくづく思う」

 さらに、有働・井ノ原司会の『あさイチ』終了2日前にも同番組は沖縄を特集したが、このときも柳澤氏はこのように言及した。

「沖縄に在日アメリカ軍基地施設の70%が集中しているってことで、向こうに全部押し付けちゃっているんだって。そこにどうやってイマジネーションを働かせて想像できるかっていうことだと思うんだよね」
「見ているとね。よく福島の原発事故の現実と沖縄の現実と、ぼく重なって見えることがあるんだよね。自分も問題として考えたときに自分はどういうふうにすればいいのか、何を言えばいいのかって非常に似ているような気がするんだよね。本当に東京の真ん中に基地ができるかどうかっていう話を考えてみたらどうか、原発を置いてみたらどうかっていう話と共通するような」

 基地問題は日本全体の問題であると同時に、国民ひとりひとりが突きつけられている問題だ──。この在京メディアに決定的に欠けた視点を、柳澤氏は一貫して指摘し、視聴者に語りつづけたのだ。

 柳澤氏のこうした姿勢は、戦争への危機感が増すなかでも貫かれた。2016年8月に、憲法9条の改正が議論にあがるなかで現代の戦争を考えよう、というテーマで特集が組まれたときには、VTR出演したミャンマー人の女性が「銃を持って戦うことだけが戦争ではない。言いたいことを言えないことも戦争」とコメント。すると、これを受けて柳澤氏は、こんな話をはじめた。

「メディアで伝える立場にあるぼくらの仕事っていうのは一体何なのかなって、やっぱり考えなきゃいけない」
「目の前にある現実が一体何なのかなって立ち止まって、そこから『本当なのかな? これひょっとしたら嘘かもしれないな』って、それをチェックしていくのがぼくらの仕事だと思うんだよね。で、右から左にきたものをそのまんま『こうですよ』って垂れ流すのは、ぼくらの仕事を果たしていないと思う」

●柳澤氏のコメンテーター起用は、小松アナがあまりにネトウヨだから!?

 これは安倍政権の広報放送局に成り下がったNHKの番組で、まさに自局の報道批判とも言える発言だろう。また、柳澤氏は、2014年に放送された連続テレビ小説『花子とアン』で、戦争への協力ともいえる行動をとる主人公・花子に対して“腹心の友”である蓮子が発した「わたくしは時代の波に平伏したりしない。世の中がどこへ向かおうと、言いたいことを言う、書きたいことを書くわ」という台詞が登場したその日、『あさイチ』のなかでこの台詞を受けて、「メディアにかかわるぼくらとしても、身につまされることですよ。本当のことを言える時代かどうかっていう……」とすかさず反応していた。

 本当のことを言わなければいけない、右から左に垂れ流すのが仕事ではない。柳澤氏はこうした自覚と矜持をもっている、数少ない“信頼できる”ジャーナリストと言えるだろう。

 しかし、なぜ『ワイド!スクランブル』は今回、政権批判も厭わない柳澤氏をコメンテーターに抜擢したのか。とくに同番組は、秋のリニューアルで安倍政権擁護や右派的主張を連発してネトウヨに大人気の小松靖アナウンサーをMCに大抜擢したばかり。小松アナは最近まで進行役を務めていたAbemaTVのニュース番組『Abema Prime』で、あの杉田水脈議員まで擁護してみせたような人物だ。

 だが、どうやら柳澤氏の抜擢は、この小松アナと関係があるらしい。

「じつは、局の上層部は小松アナがここまでネトウヨ丸出しの偏った思想の持ち主だとは思っていなかったらしい。それで、このまま自由に喋らせたら『ニュース女子』のようなネトウヨ的なフェイク情報も擁護して炎上を引き起こすようなこともやりかねないということで、柳澤さんのほか、火曜コメンテーターに共同通信社編集委員の太田昌克氏のようなリベラルなコメンテーターを配置したんです」(テレビ朝日関係者)

 局アナのネトウヨ思想のためにコメンテーターでバランスをとるとは、なんともトホホな話。しかし、それでもテレビが政権に忖度し、批判もせずに「右から左に垂れ流す」だけの報道・情報番組で溢れかえるなか、柳澤氏のようなジャーナリストが発言する場があることは重要だ。今後の活躍に大いに期待したい。
(編集部)

  • 10/12 13:02
  • リテラ

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