麻原彰晃の散骨は国がやるべき?葬儀業界から見た懸念

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 オウム真理教元代表・麻原彰晃こと松本智津夫の死刑が執行され、彼の遺骨の取扱いを巡って激しいやりとりが起こっています。

 その背景を『子供に迷惑をかけないお葬式の教科書』著者である葬儀ブロガーの私、赤城啓昭が葬儀屋さんの視点で読み解いてみました。

◆葬儀屋が考える「散骨とは何か」

 問題を整理するため現在(2018年7月17日時点)までの出来事を、報道を元に時系列で振り返ってみます。

7月6日

・麻原彰晃の死刑が執行される。

7月9日

・府中市の火葬場で火葬される。遺骨の引取人として生前麻原が四女を指名していたが、四女は遺骨の受け取りを拒否。遺骨は東京拘置所に安置されている模様。

7月11日

・四女の代理人の弁護士が記者会見。「遺骨をパウダー化し、太平洋に散骨してほしい」「散骨費用は国が負担して欲しい」と要請する

 散骨とは遺骨を粉状にして海など墓地以外の場所にまく行為です。代理人の弁護士は「パウダー化」という表現を使っています。確かにその通りなのですが、葬儀業界内では「粉骨」と呼んでいます。

 散骨の際、粉骨にするのは必須です。

 散骨という行為自体、法的にはグレーな行為です。法律上、遺骨は墓地に納めるのが原則です。例外的に「節度を持って散骨を行うなら黙認」というのが国の姿勢です。

 遺骨であると分かる状態で撒くことは節度を守っていると言えないため、粉骨を行うのです。

◆散骨に実際に立ち会ってみて感じたこと

 私は一度、海上の散骨に立ち会ったことがあります。まず粉骨した遺骨をいくつかに分けて紙に包みます。そして港から船に乗って沖に出ます。1時間くらい航海すると周りは水平線しか見えない状態です。

 そこで、お花といっしょに遺骨を海に撒きました。船は故人が生前好きだったジャズのナンバーを流しながら、ゆっくり沈んでいく遺骨を包んだ紙の周りを、ゆっくり回ります。

 遺骨が完全に沈んだのを見届けてから、港に帰りました。

 この体験をするまで、遺骨はお墓に納めるものという考えだったので、散骨ってどうなんだろう?という気持ちが正直ありました。しかし実際に体験してみると、静かな感動を覚えました。おそらく命は海から生まれて、また海に還っていくというのが、崇高なことに思えたからだと思います。

 一連の麻原彰晃の遺骨に関わる騒動の根底には「仏舎利信仰」があります。

 釈迦は亡くなると火葬され、その遺骨は周辺8国で分骨されたあと各地に伝わったとされて崇拝の対象になっています。このように釈迦の遺骨を崇拝するのが仏舎利信仰と呼ばれるものです。

◆散骨を希望する故人は全体の何%?

 この思想の影響を受けているのか、現在でも日本人は故人の遺骨をまるで故人自身のように大事します。

 この遺骨に固執する感情が原因で、日本では散骨が定着していません。実は散骨をされる方というのは、全体の1%程に過ぎないのです。なぜなら遺族が散骨に反対するからです。

 手元に遺骨がないのは堪えられないという遺族は多いのです。たとえ亡くなった本人が生前散骨を望んでいたとしても、家族に反対されてしまえば実現させることはできません。

 また権力を持つ人が亡くなると、その遺骨を持つこと自体が、その地位の正当な継承者と周りから見なされることがあります。

 二子山親方が亡くなったときも長男の花田勝氏と次男の貴乃花親方の間で遺骨を巡る確執があったと報道されました。

◆なぜ四女側は散骨を希望するのか

 もしオウム真理教や関連教団の信者が麻原の遺骨を入手すれば、それを崇拝の対象にし、組織としての求心力に利用するかもしれません。

 信者が是が非でも麻原の遺骨を手に入れたいと考えていても不思議はありません。そして過去に起こした事件を考えると「手段を選ばない」可能性もあります。

 それを四女は恐れたので、遺骨の受け取りを拒否したのでしょう。

 とはいえ遺骨の受取り手がいない状態をそのままにしておくことは将来に禍根(かこん)を残します。

 そこで苦肉の策として、散骨、つまり海に撒くという方法をとることにしたのだと思います。粉骨して海に撒いてしまえば信者は遺骨を手に入れることができません。

 やっかいなことになるのは分かっていたのだから、火葬の段階で、遺骨すら残らないように遺体を完全焼却することは技術的にはできたはずです。ただそうするとその火葬場が信者にとって聖地化する可能性があります。これは上手い方法とは言えないでしょう。

 私が最初不思議に思ったのは、四女側の散骨費用は国が負担して欲しいという主張です。

◆麻原彰晃の散骨は可能なのか

 海への散骨費用の相場は、完全に船をチャーターする場合は25万~30万円ほどです。しかし関係者が同行せず、期日も全部業者任せにして良いのであれば、粉骨料を含めて10万円ほどです。

 これくらいの費用ならなんとか捻出できそうなものです。それでも国に負担を求める理由は以下の2つが考えられます。

1)自分の責任を回避する

 仮に四女側の主導で散骨を行うことができたとしても、将来にわたって信者の恨みを買うことは確実です。それは避けたいでしょう。四女側にとって散骨の主体は国でなければならないのです。

2)引き受ける散骨業者がいない

 火葬は刑務所の出入りの葬儀社がいやいやながらもやるでしょう。しかしお葬式はやっかいごとを避けるために、どこの葬儀社も引き受けないでしょう。

 散骨も同様です。専用の船を持つ散骨業者は何社かありますが、引き受けたら最後、最悪の場合襲撃を受けないともかぎりません。また麻原の散骨を引き受けたことが表沙汰になれば商売にも影響するでしょう。つまり引き受ける業者はいないのです。

 そうなると残るは国有の船を使うという選択肢しかありません。例えば海上保安庁なら最も安全に散骨を行えるはずです。最終的に、四女側はこのようなプランを描いている可能性があります。

 以上のように考えてくると、一見突飛に見える四女側の主張も、落としどころとしてはこれ以外にないのかもしれません。<文/赤城啓昭>

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  • 7/18 8:51
  • 日刊SPA!

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この記事のみんなのコメント

14
  • 鬼凶屋@

    7/18 22:37

    信者とマスコミに四女が今もず~っと見張られてるんだろうナ。

  • 極秘すべきだよ、仏舎利化したらヤバイですよ

  • ふざけるな⁉国民の税金を下らん麻原に使うのは⁉

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