日テレの視聴率が下がり始めた…凋落突入時のフジテレビと酷似、編成全体に綻び

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 2017年度はテレビCMに関わる部分で、いろんな変化が顕在化した1年だった。広告主の視線が厳しくなってきたからだ。その結果として今春から、「テレビスポット取引の新指標」として、 「ALL&P+C7」(個人全体視聴率&リアルタイム番組視聴率+タイムシフトCM視聴率)が使われ始めた。従来の視聴率が世帯から個人となり、タイムシフト視聴率も勘案されるようになったのである。

 ところが5月、民放キー各局の決算が明らかになると、状況はかなり深刻なことがわかってきた。全局の広告収入が前年度比でマイナスに転じていたからだ。これはリーマンショックが起こった2008年度および2009年度以来で、テレビ広告が厳しい状況に晒されていることを示している。
 
 視聴率争いでトップを独走してきた日本テレビも、広告収入で前期比マイナスなった点は、業界を驚かせた。盤石といわれたトップ局に何が起こっているのか、各種データから読み解いてみよう。

●成長に陰り

 同局の決算は12年度から絶好調が続いた。ただし16年度以降はやや雲行きが怪しい。連結の売上高は、12年度の3264億円から15年度には4000億円を超えた。単体の売上高も2739億円から15年度には3000億円を超えた。連結の営業利益も12年度の354億円から15年度には500億円を超え、50%の伸びである。単体の営業利益も、12年度の288億円から15年度には450億円を超え、50%超の伸びとなった。
 
 ところが16~17年度、明らかに成長に陰りが見える。連結売上高は対前年度で16年度は0.5%、17年度は1.7%の伸びに留まった。単体売上高も16年度は1.3%、17年度は0.1%に留まった。営業利益に至っては、連結が16年度は1.2%減、17年度は3.0%減、単体も16年度は3.4%減、17年度は4.8%減となっており、明らかに成長に陰りが見え始めている。

●視聴率と広告収入

 ここ10年ほどの日テレの強さは、視聴率の安定にあった。例えばG・P帯(夜7~11時)は、10年以上12%台を保っていた。全日(6~24時)も基本的に8%台で推移してきた。HUT(総世帯視聴率)が下落を続け、他のキー4局は大きく数字を落とす時期があったが、日テレだけは大きな下落を経験することなく、順調に推移してきたのである。

 視聴率が安定することで広告収入も一定水準を保ってきたと思いきや、実際は増収を続けていた。2009年度の広告収入は2054億円。以後増え続け、ピークだった16年度は2557億円。毎年3%以上増え、7年間で約25%の成長をしていた計算だ。

 ところが17年度は、この広告収入がついにマイナスに転じた。16年度までは、視聴率が上がってないのに広告収入を伸ばしていた。広告単価が上がってきたことになるが、17年度はキー5局すべてがマイナスとなった。テレビ広告に対するスポンサーの視線は年々厳しくなっていたが、ついにトップの日テレも上昇トレンドを続けられなくなった。潮目の変化は、かなり深刻といえよう。

●視聴率は好調だが……

 日テレの好調を支える最大の力は、G・P帯の9割強を占めるバラエティ番組の強さだ。ビデオリサーチが発表する「週間高視聴率番組10」のバラエティ部門では、ここ数年、日テレが6割以上を占めてきた。しかもその比率が年々高まっている。
 
 たとえば17年度のバラエティ週間ベスト10にランクインした番組は、529あった。そのうち日テレは400番組、なんと76%を占めた。『世界の果てまでイッテQ!』『ザ!鉄腕!DASH!!』『行列のできる法律相談所』などの日曜夜の番組がベスト10の常連となっている。他にも『踊る!さんま御殿!!』『人生が変わる1分間の深イイ話』『しゃべくり007』『有吉ゼミ』など、13%以上を頻繁にとる番組が目白押しだ。盤石な体制は圧倒的だ。

 同局のこの強さの秘訣は、レギュラー番組重視の姿勢にある。安易に2~3時間の特番を組まず、定曜定時の放送を続けることで、視聴者の体内に自然とタイムテーブルが出来るように努めている点である。

 具体的にはこんな感じだ。一旦始めたバラエティは、辛抱強く長期的視点で見守る。番組自体を容易に改編せず、コーナーなど内容の一部を変えていく。視聴者に新しさを絶えず発見してもらえる番組に努め、「やっぱり面白いね、この番組」と思ってもらえるように努力を続けているという。

 この結果が、日曜夜のように点から線、線から面への広がりとなる。そして視聴習慣が定着し、14年度以降4年連続三冠王につながっていった。勝利の方程式だった。

●今後の不安

 では今後を見渡したとき、同局の盤石ぶりは安泰だろうか。実はピークを越え始めたのではという不安も出ている。例えば視聴率だ。09年度を基準に年度別の推移を見ると、プラスマイナス5%ほどで安定しているように見える。ところが4~6月の第1四半期で見ると、16~18年度はマイナス基調になっている。G帯(夜7~10時)は15年度第1四半期の12.6%が18年度は11.7%、P帯(夜7~11時)は15年度12.3%が18年度11.3%、全日(6~24時)も8.4%から7.6%に下がっている。特に全日は3年連続マイナスを続けている。

 全日の後退については、15年から月別の推移で比べてみると明確になる。同局の1月は箱根駅伝があるため毎年高い。そこから5~7月にかけて下落する傾向があり、『24時間テレビ』のある8月にぴょんと跳ね上がる。そして年末に向けて微増するというのが、毎年のパターンだった。ところが過去3年、1~6月は基本的に毎月下げ続けている。もはやこれは、下降トレンドが固定的になっているとみるべきだろう。

 ほかにも綻びは散見され始めている。まずはドラマ。夜10時台に水・土・日の3枠あるが、17年度は下落傾向だ。土曜こそ9時台から10時台に繰り下げた効果で、年平均が前年比1%ほど上昇した。ところが日曜は0.9%、水曜は2.2%も下げている。この傾向は18年度第1四半期も大きく改善されたとはいいがたい。

 バラエティにも陰りが出ている。たとえば『幸せ!ボンビーガール』『秘密のケンミンSHOW』などがある平日夜9時台は、14年度以降下降気味で、3年で1.2%減らした。日曜夜の快進撃で気づきにくいが、同局の得意分野にも綻びが出始めているのかもしれない。

 情報番組も同様だ。たとえば朝8時からの『スッキリ』は、14~16年度はほぼ7%台を取っていた。ところが17年度は6.5%にとどまった。12時台の『ヒルナンデス!』も6%台半ば以上だったが、17年度は6.1%に終わった。やはり特定の番組が息切れ気味というだけではなく、面としての編成全体が軋み始めている可能性も拭い切れない。

●フジテレビの教訓

 かつてフジが04年から7年連続で三冠王を続けていた時代、視聴率は05年度をピークに下がり始めていた。ところが同局はそれに気づきながら、下落傾向に歯止めをかけるような対策が打てなかった。首位を守るために改革しにくいことを「トップのジレンマ」というが、結局それが今日まで続く大幅後退につながってしまった。

 この事例に基づくなら、日テレの現状は09~10年頃のフジに似ている。そういえば日テレも、昨年10月と今年4月の改編でほとんど変更していない。編成幹部は「編成としては、無改編は非常に勇気が必要で、チャレンジングなこと。変えないで結果が出なければ、変えなかった人の責任。私たちはあえて変えず、改めて地上波ネットワークの価値を見いだそうと思う。それは安穏としているわけではなく、危機感を持っているから」と説明した。これが凶と出るか吉と出るか、今後の展開が注目される。

 同局は90年代から「放送を科学する」との矜持を持ち、今日の独走態勢を築き上げてきた。今の黄色信号に対しては、自力で反転攻勢の道を見いだすのかもしれない。どこでどう反転するのか、同局の知恵と行動力を見守りたい。
(文=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表)

  • 7/11 19:50
  • Business Journal

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