「あなたには帰る家がある」踏切を挟んで見えた新しい家族。一方、木村多江はいよいよ犯罪の域に8話

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綾子「あら、お世話になってます」

6月1日(金)放送の金曜ドラマ『あなたには帰る家がある』(TBS系列)第8話。
秀明(玉木宏)の住むアパートに、盗んだ合鍵で侵入していた綾子(木村多江)。驚きと恐怖でただ首を振ることしかできない秀明を放置して、しれっと真弓(中谷美紀)に挨拶する。こんなの警察を呼ぶ案件ですよ。

別れて終わりじゃない、人生につまずかせる不倫


真弓「高をくくる。高をくくって、いたのだけれど」

秀明は頼りない夫で、役に立たないと高をくくっていた真弓。綾子は何もできない主婦で、どうせまともに働けないと高をくくっていた茄子田(ユースケ・サンタマリア)。
今回、この2人の予想を裏切り秀明も綾子も全力疾走した。秀明は娘のために。綾子は自分のために。

秀明と真弓の娘・麗奈(桜田ひより)は、友達の楓(三木理紗子)に「誰にも言わないで」と釘を刺して親の離婚について打ち明けた。しかし、楓は同じ陸上部のメンバーに麗奈の事情を話してしまう。からかわれることはなかった。でも、みんなから「がんばろうね」「大丈夫?」と声をかけられて、麗奈は疲弊していく。

「もうがんばれないの!」と麗奈は叫ぶ。

麗奈「みんな『元気出して』って、『大丈夫?』って言うけどさ、平気なふりして笑ってるのもう疲れた。『がんばれる?』とか聞かないでよ。そんな風に聞かれたら『うん』って言うしかないじゃん。ママが一人でがんばってるのわかるし、私が元気にしてれば、陸上がんばればママが喜ぶのわかってるけど、もう無理なの。がんばれないの」

演じている桜田ひよりが醸す素朴さ、純粋さから「こんなに良い子なのに」と同情してしまう。でも本当は、傍から見て良い子でもそうじゃない子でも、親の不倫や離婚からは大なり小なり傷を負う。

綾子と会っていたときの秀明は、自分がしている気持ち良いことがここまで人を傷つけるとは考えもしていなかった。自分が真弓に怒られることを心配していた。きっとバレないし、バレても真弓は傷つかないと高をくくっていた。

軽い気持ちの不倫が、どんなに周りの人を傷つけ、その人たちの人生をつまずかせていくかその現実を、秀明と真弓の掛け合いや怖すぎて笑えてくる綾子の登場といったコメディシーンの合間に、しっかりと描いていく。

別居と踏切で「家族の距離感」を描く


陸上も学校も辞めたいといって逃げる麗奈を、秀明は全力疾走で追いかけ応援した。

麗奈「がんばれ? 何言ってんの。だれのせいだと思ってんの。ママがかわいそう。全部パパのせいでしょ、パパなんて大っ嫌い! 大っ嫌い!」
秀明「そうだよ、全部パパのせいだよ! でも、がんばれー!」
真弓「ちょっと、何言ってんの……」
秀明「陸上やっててもやってなくても、学校行っても行ってなくても、今も、高校生になって大学生になって大人になって。パパ、ずーっとずっと一生、麗奈のこと応援したいんだよ。嫌われても呆れられても、一生応援したいんだよ。だから麗奈、がんばれー! がんばれー!」
真弓「ママも、ママも応援する。麗奈のこと一生応援したい! 麗奈、がんばれー!」

いつからか、がんばっている人に「がんばれ」と言ってはいけないという説が広く知られるようになった。もうがんばれないと言っている娘を応援する両親は、そのセオリーから外れて自分たちの気持ちを叫んでいる。

これが、たとえば麗奈を抱きしめての台詞だったら、自分勝手な親の気持ちの押しつけに見えただろう。でも、このシーンで麗奈と両親の間には電車が来る前の踏切があった。

踏み超えられない境界線を間に挟む。これは、麗奈が一人の人間として尊重されていることを表していた。秀明と真弓の応援はただの親の気持ちであり、それをどのように受け取るかは麗奈の自由だ。受け取らなくたっていい。
そしてそれは、親の不倫や離婚をどう受け取るかもまた、麗奈の自由であることを示している。

家族であっても、必要な距離がある。
秀明と真弓は、一度離れたことで快適な距離感とお互いの良いところを再認識できた。こどもを愛しているからといって、伝えたいことを必ずしも抱きしめて言わなくても良い。
別居や踏切を用いて、再生していく家族の形を鮮やかに描いた。

綾子の過去はいつ明かされるか


お互いに愛情を伝えあえるちょうど良い距離感がわかってきた佐藤家。そして、他人との距離感がおかしい綾子。

秀明のアパートに届け物をしようと向かっている真弓を見かけ、綾子は全力疾走する。先回りするためだ。
雨の日に秀明の家に寄って盗んだ合鍵を使い、借りたパーカーを着て、秀明のアパートから出てくる。窃盗と不法侵入で警察を呼ぶ案件ですよ。

姑に「男に寄生するしか能がない」と言われ、茄子田には「お前の過去も消せると思うのか?」と問われた綾子。息子の慎吾(萩原利久)の苛立った表情。綾子の過去に何があったのか明かされることが、クライマックスの1つになりそうだ。

ところで、創作物において、過去に何かあった薄幸女は弁当屋や昔ながらの定食屋で働きがちだ。綾子も三角巾と割烹着を身につけて定食屋で働いていた。似合いすぎる。このまま自立してくれたらいいのに。

四者会談とカレーパーティーでいったい何度波乱が起こるかわからない第9話は、今夜10時から放送予定だ。

(むらたえりか)

【配信サイト】
・TBSオンデマンド
・Paravi
・TVer

金曜ドラマ『あなたには帰る家がある』(TBS系列)
原作:山本文緒『あなたには帰る家がある』(角川文庫)
脚本:大島里美
プロデューサー:高成麻畝子、大高さえ子
演出:平野俊一、吉田健、松田礼人
編成:高橋正尚
音楽:兼松衆
主題歌:Superfly「Fall」(ワーナーミュージック・ジャパン)

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