本田圭佑がハリルに触れた発言が炎上中。どうなる「腐ったリンゴ」問題

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 いまだ尾を引くハリルホジッチ前日本代表監督(65)の解任騒動だが、この件に関するイビチャ・オシム元日本代表監督(77)のインタビューが興味深かった。

 ハリル氏個人の難儀な性格や言動もさることながら、代表内の「腐ったリンゴ」こそが問題の本質だと論じていたからだ。

◆選手を「腐ったリンゴ」にたとえたオシム氏

 それは以下のような文脈で登場した。

<チームがこのままで機能しないと思われたときには、監督か選手を代えるしかない。しかし選手全員を取り代えることは困難だ。

 そんなときに手っ取り早いのは、腐ったリンゴを取り出すことだ。腐ったリンゴは放っておけば、周りのリンゴも腐りだす。監督は原因を作っている選手を特定し、速やかに排除しなければならない

 だが、それでもできないときは…監督を代えるしかない。>

(『web Sportiva』5月10日、オシム元監督インタビュー)

 オシム氏が「腐ったリンゴ」イコール“選手”だと断言した点に注目したい。日本代表選手の中に周囲に悪影響を与える存在がいることを認めたうえで、彼らの扱いを誤ったためにハリル氏は追い出されたと論じているからだ。

◆“ハリルに服従しない”本田選手の発言に批判殺到

 こうした状況の中、5月14日放送のNHK『プロフェッショナル仕事の流儀』を観て、多くの人が気づいてしまったようなのだ。渦中の本田圭佑選手(31)の発言が物議をかもしているのである。

ハリルのやるサッカーに全てを服従して選ばれていく、そのことの方が僕は恥ずかしいと思っているので。自分を貫いたという自分に誇りは持っています

 と語ってしまったからだ(4月1日収録のインタビュー)。

 案の定、これを掲載した番組公式ツイッターは大炎上。“監督の指示に従うことを『服従』と捉えて反発し、そのことを美化する選手のどこがプロフェッショナルなのか”とか、“もう日本代表を応援する気がなくなった”との否定的なコメントであふれかえっている。

 さらに、同日帰国した香川真司選手(29)の会見も波紋を呼んでいる。3ヶ月に渡る長期離脱を意識してか、「ケガの具合はまったく問題ない。みなさんが思っている以上に問題ないことを強調したい」と語り、さらに「ワールドカップまでがシーズンだと思っている」と言い切ったのだ。

 だが、あたかもメンバーに選出されることが決まっているかのような物言いに、疑問を感じたファンも少なくないようだった。

 いずれにせよ、状況が状況なのだから、二人ともあまり余計なことをしゃべらない方がいいと思うのだが……。

◆代表監督をめぐって23年前にも「腐ったミカン」騒動が

 ところで、この「腐ったリンゴ」というフレーズに懐かしい思いがするサッカーファンもいるかもしれない。今から23年前の日本サッカー界を騒がせたのも同じように形容された人たちだったからだ。

 1995年の11月。(以下肩書は95年当時のもの)代表監督の加茂周氏をめぐる去就がにわかに注目を集めていた。代表監督への評価を下す強化委員会は加茂氏ではワールドカップ予選を勝ち抜けないと判断。ヴェルディ川崎の監督だったネルシーニョ氏を後任に推薦したのだが、これを長沼健会長以下、協会幹部が覆してしまったのだ。

 川淵三郎副会長によると条件面で折り合いがつかなかったために断念したということだが、ネルシーニョ氏の主張は異なっていた。年俸の額やコーチングスタッフに日本人を起用することなどを受け入れていたのに、突如なかった話にされたのだ。

 そこで、ネルシーニョ氏は「協会には腐ったミカンがいる」と捨てゼリフを浴びせたという話だ。

 加茂氏をめぐる騒動については諸説ある。長沼氏の大学の後輩である加茂氏をかばおうと忖度(そんたく)が働いたのではないかとも言われているし、強化委員長だった加藤久氏が当時39歳と若く、重鎮に対して影響力を持てなかったからだとも言われている。

◆サッカー協会の収益の7割は、代表チーム頼み

 それでも、「腐ったミカン」騒動は協会内の政治力学にとどまっていた。だが、今回はスポーツ以外の要素がとうとう現役の選手にまで及んできた。ここに「腐ったリンゴ」問題の根深さがあるのだ。

 いち選手が必要以上に力を持ち、監督の人事にまで口を出し、そして思い通りになる状況が出来上がってしまった。要するに、腐敗の質が変わってきているのである。

 もちろん、どの国にもスター選手はいるし、その発言が影響を持つのは自然なことだ。ただし、日本のケースは特殊だ。他国に比べて、代表チームのブランドが大きすぎるのだ。

 サッカー協会マーケティング部部長・野上宏志氏によると、年間収益のおよそ7割が代表関連による収入だという。ちなみに過去最大の約235億円もの収入を見込んでいる2018年度予算だが、これはロシアW杯でベスト8まで進んだ場合の賞金などを合わせた額だ。

 このように、極めて多くを日本代表チームの人気に依存している現状にあっては、知名度が高くメディアへの露出も多い中心選手が協会にとってどれだけ大切な存在かは計り知れない。

 そういうわけで、監督よりもスポンサー企業と密接な関係にある選手の主張の方が通ってしまうような、いびつな力関係が生まれたとしても何ら不思議ではないのだ。

◆「背番号は協会とアディダスが決めている」

 しかし、この利益をもたらす構造こそが「腐ったリンゴ」の育つ土壌になってしまったとしたら、今後も同様の問題が繰り返されることになりはしないだろうか。少なくとも、現役の選手が「背番号は協会とアディダスが決めている」(2014年、当時の日本代表・遠藤保仁選手の発言)と投げやりになってしまう状況が健全だとは言えないだろう。

 もちろんプロスポーツである以上、ビジネス面を否定すべきではない。だが、そのために“無理が通れば道理が引っ込む”状態を黙認する風土が出来上がってしまっているのだとしたら、危機的と言わざるを得ない。サッカー日本代表が、未来永劫にわたってキラーコンテンツであり続ける保証などどこにもないからである。

 ハリル氏の訴訟について「我々、チームはもう、前に進んでいますから」と語った田嶋幸三会長(60)。だが、23年もの時を費やしてもなお腐った果実を取り除けない組織に前進する力はあるのだろうか? そもそも、その進行方向は本当に「前」なのだろうか?

 多くの人は、限りなくNOに近い疑問を感じているはずだ。<TEXT/石黒隆之>

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  • 5/15 15:53
  • 日刊SPA!

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この記事のみんなのコメント

2
  • あきひろ

    5/17 12:39

    遠藤保仁はアンブロ派だから他所の不正はすぐさま叩くんだな。

  • ぱおぱ

    5/17 12:31

    JFAは学閥だから。未だに企業の部活体質なんだろな。

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