【ライターコラムfrom清水】土壇場で残留争いに勝ち残った清水…変わりつつあるチームの“風習”とは

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「ベガルタ仙台戦(第30節)ぐらいから選手みんなで話し合ったりして、チームがひとつになる雰囲気や、残留に向けてしがみついてやるという気持ちが出てきました。難しい試合もありましたけど、最後にそれが残留につながったのは良かったと思います」

 最終節・ヴィッセル神戸戦でなんとかJ1残留を決めた後、チームで唯一フルタイム出場を記録した守護神・六反勇治はこう語った。と同時に、次のような想いも口にする。

「今年エスパルスに加入して感じたのが、なかなかチームがひとつになれない部分があって、誰かが何かをやれば、それを否定したり茶化したりする風習が少しあるなと感じました。でも、そこを少しずつなくしていこうと思っている選手もいて、残留を争うことによって、そういう不用なものが消えたというのは大きいと思います」

 六反が指摘する“風習”は、清水に限ったことではなく、昔から多くのチームで聞く話だが、そうしたチームは長期的に見るとなかなか結果が出ないケースが多い。今季はプロになって初めてキャプテンを務めた鄭大世も、その風習を変えようとした1人だった。

 良い意味で空気を読まないタイプの鄭は、練習中から周囲に厳しい言葉をかけ、球際の激しさなどを求め続けてきた。さらに、ピッチ内外でもストイックに自らを追い込み、ベテランとしての範を示した。「僕も(周りから)嫌われるのはイヤなんですよ」という彼は、キャプテンになってから声のかけ方や言葉の選び方などにも気を使うようになり、「自分自身もすごく勉強になりました」と語る。

 今季、「9位以内」(小林伸二監督)という目標を掲げてJ1に挑んだ清水が、思った以上に苦戦した理由のひとつは、チームとしてのウィークポイントをなかなか改善できなかったことにある。セットプレーからの失点はかなり減らすことができたが、カウンターからの失点は最後まで目立っていた。また、失点した後のメンタル的な落ち込み、逆にリードした後の試合運び、逃げ切りに入ったときの時間の使い方など、技術・戦術以外の課題も多かった。

 そこに“風習”が影響したと決めつけることはできないが、失点が減らせなかったことによって、なかなか攻撃に注力することができず、後半戦はエース・鄭の負傷離脱もあって勝ち点を伸ばせなかった。

 だが、選手同士が自ら進んで話し合いを重ね、チームがひとつになって戦えた最終節では、上記の課題もカウンター対応以外は明らかに改善され、それが3-1の逆転勝ちに結びついた。もしも後半に守りに入って3点目が取れず、2-2に追いつかれていたら……。甲府が土壇場で勝ち点3を得たため降格が決まっていたことになる。そう考えると、最後の最後で課題を克服できたことは、本当に大きな価値があった。

 ただ、だからといって安心はできない。

「これで良かったと思ったら、年が明けたらまた同じ雰囲気が出てくるかもしれないし、そうなったら来年、再来年と同じようなことを繰り返すと思います」と六反もつけ加える。

 それはクラブ(=会社)としても同様だろう。J1復帰の功労者である小林伸二監督を退任させ、来季はチームをさらにステージアップさせる監督を選ばなければならない。今季獲得した新戦力のうち、シーズンを通して活躍したのは六反だけ。とくにカヌとフレイレは守備の改善のために重要なピースのはずだったが、その目的はほとんど果たせなかった。

 チーム編成という面で、近年は成功例が失敗例を上回っているとは言い難い。単純に戦力としてだけでなく、鄭や六反のようにチームの風習や空気を変えられる選手も必要だろう。

「まずは選手たちの意識改革、戦う姿勢というのをもっと学ばなければいけないと思うし、選手だけでなくてクラブとして成長していくために、あらゆる部門でそれぞれがストイックに自分と向き合いながら成長していくことが、エスパルスの未来に必要だと思います」

 すでにキャプテンらしさが板についている鄭は、最終節終了後に率直な意見を口にした。小林監督も最後の記者会見で次のような願いを語っている。

「チームというのはクラブの中の一部であって、いかにクラブワークとしてクラブが充実していくか。今日はサポーターのこういう応援をメンバー外もフロントの人も見たというのがすごく大きくて、クラブの中にチームがあるということで(来季は)ひとつ大きく成長できればいいなと思っています」

 クラブとして安定した成長を続けていくために、来シーズンはどう改革を継続していくのか。清水にとって“クラブ力”が問われる1年になるのではないだろうか。

文=前島芳雄

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  • 12/7 18:22
  • サッカーキング

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