大河ドラマ『直虎』信康の演技に涙…平埜生成、ただのイケメンじゃない!

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 11月12日に放送されたNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』、第45回「魔王のいけにえ」。ここ最近物語にただよう不穏な空気から、視聴者が来るか来るかと期待をふくらませていた「信康事件」がついに勃発しました。

 徳川家康が嫡男・信康を切腹させ、その母・築山殿を殺害した悲劇的事件。その前半戦を描く回となり、「神回!」「鬼脚本(褒めている)」とSNSがおおいに湧いています。

 特に話題になったのが、徳川家康が溺愛する信康に死罪を言い渡した場面。主君のために命を投げ出さんとする忠臣たちの声に、一粒の涙をはらりと流す信康。父親を信じて部下を静かに、力強く諭す息子の姿に、動揺して瞳を揺らす家康。

 家康を演じるベテラン・阿部サダヲとともに、24歳の若さながら圧巻の演技を見せた信康役の平埜生成(ひらの きなり)が、今注目を浴びています。

◆舞台で鍛えられた俳優


 平埜生成はアミューズの若手俳優が集まる劇団プレステージに所属し、舞台を中心に活躍していました。

 2014年に出演した舞台『ロミオとジュリエット』で蜷川幸雄演出に洗礼を受けたようで、過去作品を見るとこの舞台を境に演技の質ががらりと変わっています(とはいえ、それ以前も上手い時には上手く、棒読みっぽくなる時との差が激しい。2014年のドラマ『夜のせんせい』など)。

 それから外部公演が増え、宮田慶子や栗山民也といった著名な演出家から鍛えられ、今年の春に劇団を退団。これを機にドラマ・映画に進出しています。

◆涙の演技にいつも泣かされる


 私が平埜生成を初めて見たのは2016年2月に東京芸術劇場シアターウエストで上演された舞台『オーファンズ』でした。

 その評判が口コミで伝わり、立ち見客も出た舞台で、板の上から発する出演者3人の熱気で、会場全体が彼らの世界にすっかり取り込まれていたのを覚えています。

 観客は、激しい感情をぶつけ合う3人の誰かに感情移入したはずで、私は大好きな兄の元を離れることを決意して泣き叫ぶ弟役の平埜生成に心をぐいぐい掴まれて大量の涙を流しました。ああ、もう一度観たい。

 2016年5月に放送されたドラマ『重版出来』(TBS系列)でも、主人公の勤める出版社の社長の青年期を演じていたのですが、涙ながらの「雨ニモマケズ」の朗読が印象的でした。

 やはりこの役者さんは胸が張り裂けんばかりの泣きの演技が上手い。今回の『おんな城主 直虎』を見て改めてそう感じました。

◆縦横無尽に動き回る演技がスゴイ

 また、『おんな城主 直虎』の信康役ではあまり見られませんでしたが、身体をフルに使った演技も平埜生成の特徴のひとつ。舞台の上でこれでもかというほど自由に動く、動く。

 彼の持てる技術をいかんなく発揮したのが、今年3月に出演したこまつ座の舞台『私はだれでしょう』。歌に武術、タップダンス、さらには英語もできる謎の男を演じ、アクロバットまで披露。

 本人は公演前の会見で「絶望の稽古場を過ごした」と話しているほど苦しんだようですが、そんなことは微塵(みじん)も感じられず、やはりのびのびとした演技はとても楽しいものでした。

 結果として、この難役で現在、第25回読売演劇大賞中間選考会にて市村正親らと並んで男優賞にノミネートされています。

◆演じ分けが上手い


 平埜生成のさらなる魅力として、役の幅の広さにも言及しておきたいと思います。今回、『おんな城主 直虎』で“プリンス”を演じると知ったとき、頭に「?」が浮かびました。なぜなら彼にはそんなイメージがなかったから。

 元々、劇団内での立ち位置もあり『オーファンズ』で演じたかわいい弟的役柄を得意としたようです。そうした役も多いのですが、『ロミオとジュリエット』で乱暴者のティボルトを演じて以来、平たく言えば不良っぽい役柄を特にドラマ・映画ではよく演じています。

 これが、ややきつめの顔立ちと声量のある太い声と相まってとてもハマっています(初主演を果たしたドラマ『バウンサー』、現在公開中の映画『亜人』『斉木楠雄のΨ難』など)。

 ですから、気品と知性を備えた爽やかなプリンスという役柄がこれほどしっくりくるなんて…役の幅が広がっているなぁと感心。

 しかも、それぞれの役は同一人物が演じているようには見えません(むしろ顔も変わっている気がする)。たぶん本人の個が消えているから、ちゃんと別の人格に見えるのではないかと。

 若い俳優さんはどうしても演じている本人の姿が透けて見える人が多い気がします(役柄によってはそれもアリですが、演者の無自覚のうちにキャラクターが見えてしまう)。「この人、実際はどんな人だろう」と思わせる俳優は上手いと思います。平埜生成はどんな人間なのか、本当にわからない。それは俳優としての才能を証明していると考える次第です。

 ポテンシャルの高さがうかがえる平埜生成。彼には「若手イケメン俳優」に収まることなく、手堅く役者としての地位を築いてほしいものです。

<TEXT/林らいみ>

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