「いきなり!ステーキ」、あり得ない低価格の秘密…ラーメン店が味と共に重視すべき要素

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「日本企業には優れた技術があるが、マーケティングのノウハウがないために海外企業に負けてしまう」という解説がよく聞かれ、書店にはマーケティングに関する書籍があふれている。前回の本連載では、価格を決める「プライシング」をテーマに話を進めたが、今回は価格設定を決める要素について、立教大学経営学部教授の有馬賢治氏に解説してもらった。

●価格設定に重要な3つの要素とは?

――前回連載での話より、商品・サービスを販売するには価格設定が重要な要素のひとつであることがわかりましたが、以前ある程度の人気がありながら原価率が40%以上となってしまったことで利益率が下がり、閉店に追い込まれてしまったラーメン店もありました。価格設定と原価率の関係は、無視できないものなのでしょうか。

有馬賢治氏(以下、有馬) もちろんです。価格設定は、原価を含めたあらゆるコストを考慮しなくてはなりません。「粗利(あらり)」というのは「(価格―製品原価)×販売数量」のことを指すのですが、企業活動ではこの粗利からさらに地代、光熱費、人件費などいろいろと発生する経費を引き、この差額から所謂「利益」を計算していきます。顧客が少なかろうとテナント代は安くなりませんし、お店が暇でも人件費は必ず発生します。これをふまえて売価を決定しなくてはいけません。

――では、どのように売価を決めるのですか?

有馬 価格決定の基本要因は「費用」「需要」「競争」の3つとなります。「費用」のみから価格が決められれば話は簡単なのですが、相応の買い手がつくかどうかは別問題です。たとえば、宝石や高級時計など高価な商品では多くの販売数量が期待できないので、利幅を大きくせざるを得ません。反対に、スナック菓子などたくさん売れそうなものであれば、利幅を小さくしても薄利多売的に利益を得ることができます。需要の多寡がどれくらいなのかを分析するのは、価格決定において非常に重要です。

●商品開発に加え、競争相手の研究が必要な時代へ

――さらにそこへ他店、他メーカーとの競争も意識しないといけないということですね。

有馬 そうですね。競争が激しければ顧客は他店舗に取られてしまうこともあります。たとえばラーメン店の場合、店主の立場からすると、おいしいラーメンをつくることに注力しがちですが、出店するエリアの同じ商圏に関する情報収集まで考慮できないこともあります。チェーン店であれば、本部がそういったリサーチをしたうえで出店を決めるのですが、個人事業主だとそうはいきません。

 昨今、飲食店をはじめ、どの分野にもライバルの多いご時世ですので、商圏調査を第一に考えたほうがいい時代になっています。最近では昼夜それぞれの人口、年齢層、周辺環境、競合店の有無など、さまざまなことをリサーチしてくれる調査会社もありますから、自力で調べるのが難しければそういったところの活用も選択肢の一つですね。

――競争相手も鑑みなくてはいけないとは、価格設定はやはり難しいものだという印象です。

有馬 はい。ひとつの要因に偏って価格を決定することは好ましくなく、市場環境に対応するバランス感覚は必須といえるでしょう。短期ならともかく、継続的に店舗や会社を維持するためには、顧客が期待する以上の価値を提供し続けなければなりません。あくまで製造原価は経費の一部であり、会社運営はトータルのコストで考える必要があります。そして、需要を予測して競争に対抗できる価格の模索が常に求められるということです。

――ちなみに、有馬先生から見て、価格設定がうまくいっている商品や店舗はありますか?

有馬 最近ですと、立ち食いステーキ店の「いきなり!ステーキ」などは巧みな戦略を実行しているという印象です。決してコストの低くないステーキという商品ですが、立ち食いという形式で回転率をよくして価格を抑えています。また、菓子メーカーのカルビーや湖池屋は、じゃがいも不足で販売を休止する商品が出ていますが、ポテトチップスの需要が高まることが予見されても売価を値上げしないところにプライシングへの良心が窺えます。自社商品のプライスラインをしっかり認識しているからこそ、価格を据え置きにできたのではないでしょうか。

――価格からも企業の姿勢が垣間見られるわけですね。ありがとうございました。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio)

  • 5/19 6:12
  • Business Journal

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