「サブカル」を描きたいわけじゃなかった!? 渋谷直角インタビュー(後篇)

 『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』で大きな注目を集めた渋谷直角のデビュー作『RELAX BOY』(小学館クリエイティブ)が復刻された。これを記念して、渋谷作品に込めらたメッセージ、そして「サブカル」に対する思いを伺った。

―渋谷さんの『ボサノヴァカバー』に登場する個性豊かなキャラクターのモデルについて教えてください

 キャラクターのベースは、自分の嫌いな部分を描いているのが大きいですね。「バンプ好きのブロガー」は自分の一番嫌な部分を掘り起こしたものだし、「若手ライター」の上手く行かない感じもそうですね。

 表題の「ボサノヴァカバーを歌う女性」は、とある飲み会があった時、すごく上昇志向の強い女性がいて、グイグイ人脈を作ってるのを見たことがあったんです。「でも、このぐらいしたたかにやらないと生き残れない世界かもしれないなあ」って思ったことがきっかけですね。

―渋谷さんの作品に登場する女性は「強い」イメージがあります。

 気の強い女性の方が物語を動かしやすいというのもありますね。僕の作風として、女性は自立していて、男に依存してない。もしくは利用してでも生きていく強さ。男は基本ダメ。ジブリ映画と同じです(笑)。

―『ボサノヴァカバー』は、描き始めたらどんよりした内容になった、とあとがきに書かれていますね。渋谷さんの作品は、ハッピーエンドが少ない気がします。

 そうですね。僕は、素直に、まっすぐに信じていれば大丈夫だったという経験がないんです。それをすればするほど上手く行かなかったという、これまでの人生が影響してるんだと思います(笑)。安易な希望に対する疑問があるんですよ。「信じていれば夢はかなう」みたいなメッセージは、自分の中で描くとウソになってしまうので、それはやりたくないなと。

―その一方で、登場キャラクターは、もがきながらも前に進んでいきますよね

 そうですね。彼らは、思った成果は得られなくても自分なりの答えを見つけていきます。僕としては、上手く行かなくてダメになったらお終い、という気持ちはないんです。ダメになってからがスタートなんですよね。それでもまだ諦めないことも、新しい何かを選択することも、どちらの生き方も「誰が否定できようか」って思うんですよ。その意味で「生きること」も作品のテーマなのかもしれないですね。

―『ボサノヴァカバー』が、「サブカル」と言う文脈でたくさんの方から高い評価を受けましたが、いかがですか。

 僕自身は、サブカル云々、サブカルの痛さを描いてやろうっていう切り口で描いたつもりじゃないんですよ。オビの文言もあるからか、ライターや編集者さんは、そういう風にお話しされてますけどね。その辺はちょっと面白いなと思います。「サブカル女」とか「自意識」に注目が集まったので。

 『RELAX BOY』を読めばわかると思いますが、最初の頃から僕の漫画にはお笑いや音楽の話は普通に出てきます。結論を言うと、「みんなあんまり読んでくれてなかっただけ」なんじゃないかっていう(笑)。

 この前、元Pizzicato Fiveの小西康陽さんにトークショー出てもらった時に「昔から本当にやってることが全然変わってないね」って仰ってくれました。もう、「嬉しい!小西さんが読んでくれてた!そして『ボサノヴァカバー』許してくれてた!」って感じでした。小西さんの名前も曲もマンガにいっぱい出てくるんで。

―渋谷さんご自身は、当時の「サブカル」をどのように受容してましたか?

 僕はどっぷりつかってましたね。『ロッキング・オン』の知識をそのままひけらかすような男の子でしたよ(笑)。でも、どこかでそんな自分はダメだなと、客観視していた自分もいたんです。だから、「痛さ」と「それをドーンと突き放す目線」の両方を書いちゃうんだと思います。

―それでは最後に、改めて今回の『RELAX BOY』の復刻について一言お願いします。

 なんか、すっごい「ちゃんとしてない」マンガじゃないですか(笑)。こういう「ちゃんとしてない本」が出版されるって、すごくいいことだと思うんです。今は「ちゃんとしてるかどうか」がすごく大事で、そういう本しかあまり出版されない。でも本当は、「ちゃんとしてない本」も出る世の中の方が絶対楽しいし、文化的にも豊かじゃないかなと思うんです。僕の描くものに対して「絵がヒドイ」とか感想も来ますけど、僕が子供の頃なんか、子供心にも「こ、これでいいの?」と思うような漫画がいっぱいありました。そういうの見て、「夢があるなあ」と思ってた(笑)。もちろん景気もあるとは思うんですが、「ちゃんとしてないけど楽しそう」「ちゃんとしてないけどパワーはすごい」、もっとそんな人やモノが増えたらいいのになって思います。僕もそう思われるような人になれたら嬉しいですけどね。

【イベント情報】
渋谷直角トークイベント「RELAX BOY」
2014年1月26日(日)18:00~
会場:stock books & coffee
住所:宮城県仙台市青葉区一番町1-12-7 中川ビル201

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